リアル店舗にしか生み出せない「価値」とは ~島忠様の業務改善への取り組み~
最近本社移転をしたばかりの株式会社島忠(以下「島忠」)。その背景には、移転を機にペーパーレスを徹底し、フリーアドレス制度を導入する事により社員のクリエイティブな発想を促進するなど「業務改善」の目的がありました。今回は島忠の新本社にて、店舗で働く従業員のリアルな課題や、店舗の業務改善、そして島忠の目指す“リアル店舗のあり方”についてお話を伺いました。
ECサイトとの相乗効果で「頼られる」店舗を目指す
―島忠の目指す「リアル店舗のあり方」やECサイトとの区別についてお聞かせください。
星野氏: 私たち島忠は、リアル店舗がお客様に“頼られる存在”となることを目指しています。そこでまず重要なのがお客様や従業員からみて「島忠がどう思われているのか」という事をきちんと把握する事だと思います。またお客様一人ひとりの課題解決はもちろん、お客様の求めるサービスを提供するためにも、従業員の満足度を上げる事が重要になります。このように「人」と「人」とが繋がれるのは、リアル店舗の強みの一つだと思います。
そして、ECサイトとリアル店舗のシームレス化に力をいれつつ、リアル店舗の「立地の良さ」や「高い接客力」という強みもアピールしていきたいです。例えば、ECサイトでは解決しにくい「商品がすぐに欲しい」「商品の実物を見ないと購入するのが怖い」「ネットだと製品の情報が限られている」という課題を持たれているお客様がいらっしゃる場合に、「近くにあるから、ちょっと行ってみようかな」「店舗に行けば、販売員の方が丁寧に説明してくれるだろうな」と思って頂くことが大事なのです。
岸山氏: ちなみに、ホームセンターの売場で一番多い接客内容は「商品の場所について」です。店頭の入口で商品が簡単に検索、店内で特定できるシステムの導入や、POPにQRコードを付けてECサイトでお買い物をして頂けるようなシステムが今後導入できると理想的です。
業務改善の取り組みについて
―最近の本社移転や経営理念の一新など、島忠では「従業員もお客様と同じくらい大事にする」という意識があるのですね。
星野氏: そうですね。従業員が労働環境に満足出来ていなければ、お客様にも満足して頂けるようなサービスは提供できません。社長が新たに就任された事によって経営陣の体制も大きく変わり、今は若い経営者の発想で島忠がどの方向に向けばいいのか、どのような改善をしたらいいのか、という所を整理しています。
また、新たな教育制度として社内のイントラネット「Shima Tube」という動画サイトを立ち上げました。社長からのメッセージ動画の配信や、新商品の紹介から家具の組み立て方まで、特に日頃関わる機会のない現場従業員が必要とするようなコンテンツ作りを意識しております。
岸山氏: 今までそのような情報発信のプラットフォームがなかったので、本社側で店長たちの意見をまとめて、彼らが情報を店舗に持ち帰り、従業員へ伝えるという一連の流れで情報共有が成り立っていました。
しかし、それだと情報が届くまでのスピードも遅く、正確性にも欠け、経営陣の考えも思うように伝わりません。社長も定期的に店舗をまわりますが、全店舗となると時間もかかってしまいます。しかし店舗の従業員からしてみても、社長がどういう人なのかがわからないまま、というのも好ましくありません。そのようなギャップをカバーするのが「Shima Tube」の役目です。
接客業務を圧迫する〇〇作業とは
―「業務改善」とは具体的にどういう事ですか?また、現場の課題はどのように集められているのですか?
岸山氏: 私たちのいう業務改善とは時間やコストの無駄を削減し、従業員が本来の業務である「接客」に集中できるような環境を作り出すことです。そして、その業務改善を行う上でまず大事なのが、情報共有を徹底する事により業務を「見える化」する事です。
Shima Tubeの導入により本社からのメッセージを正確に伝達する事が可能となったものの、やはり現場からの声は届きにくいので、私も直接現場に出向き、長い時は数週間ほど従業員と同じ作業を行います。その中で現場従業員のヒアリングを行い、業務改善のポイントをみつけ、改善方法などを試行錯誤します。
―実際店舗に出向き、どのような改善ポイントがありましたか?
岸山氏: 現場のルーティン作業の殆どは品出しかPOPの作成作業です。このPOP作業というのが想像以上に負担が大きく、本来一番注力すべきである接客業務を圧迫していました。
POP作業の一番手間なところはラミネートや裁断加工に時間がかかる事なのです。機械が温まるまでの5~10分の間も、何もせずに待っているわけにもいかないですよね。温まるまでの間に他の業務に気を取られて、思い出した頃には機械の温度が下がっていて…なんとも言えない気持ちになっていましたね(笑)
また、繁忙期になると皆一斉にPOP作業に取り掛かるので、裁断機に順番待ちの列が出来ていました。
ルーティン作業の品出しかPOP作業、どちらを先に改善すべきか考えたところ、品出しだとすぐに改善する事が現実的に難しかったため、まずはPOP作業を全体的に改善するべく積極的に取り組み始めました。
―具体的に、どのような改善を行いましたか?
岸山氏: 極論をいうと、まずは電子棚札に切り替えることを検討しました。メーカーから直接お話を聞き、実際に家電量販店もまわりました。結果電子棚札の魅力は十分すぎるほど伝わったのですが、やはり費用がネックでした。そこでラミネート以上、電子棚札未満で導入を検討したのがラミネート不要の耐水紙です。
▲ 右:プライスカードに耐水紙「パウチフリー」を使用
私もPOPを作成し、印刷・加工し、切って売場に取り付けるという一連の作業を行いましたが、まずPOPのサイズの種類がかなり多いことに疑問を持ちました。そこに関してはサイズの種類を絞り、売場ごとに設定する事により見た目の統一感も出させました。裁断機の順番待ちについては、ミシン目加工のある用紙を導入し裁断機を使う手間をなくしました。
―実際に業務の方は改善されたのでしょうか?お客様や従業員の反応は?
岸山氏: POPの業務改善をした事により、裁断機やラミネーターの順番待ちや故障対応といった無駄な作業時間が大幅に削減されました。作業時間の削減率を調査期間全体で見たところ、月によっては70%以上削減できた時もありました。アイテム数が多く、入れ替えも多い部門での効果が高かったです。
しかし、リアルな話になりますが、POPの業務改善をしても売上は良い意味でも悪い意味でも変わりませんでした。お客様からもこれといった反応はなかったのですが、大事なのはお客様に不便さや不快感を与えない事なので、こちらに関しては逆に良かったのかなと思います。
一方、現場従業員からは「作業が減った」という声はもちろん、裁断機やラミネーターが故障する心配がなくていい、という声も沢山頂いていますね。本来の接客業務に専念することができますし、なによりPOP作業のイライラから放たれたのは大きいと思います。
ちなみに各店舗のラミネーターは本社が管理しているのですが、「ラミネーターが壊れた、故障した」という電話が頻繁にかかってきていて、いつも大変そうでした。修理の金額を聞くと結構高くて、新品を購入したほうがいいのでは?というくらいでしたよ。
星野氏: POPの業務改善でラミネーターの使用をなくした事により、意外と本社側にも良い影響がありました。しかし「改善策を導入した、結果も良かった」からそこでおしまい、というわけにもいきません。
足し算だけではない、業務の「引き算」の必要性
岸山氏: 解決した!と思っていても、リアル店舗に限らず改善点や新しいアイデアは考えれば考えるほど出てくるものです。
しかし、現場の従業員に本社側から一方的に改善策を提案することがかえって良くない場合もあります。良かれと思い色々提案してみても、店舗従業員からすると逆に負担になってしまう事もあるのです。「新しい取り組みが増える」という事は「やらなきゃいけない事も増える」、つまり業務の足し算ばかりになってしまいます。
なので、私たちの業務ミッションの一つとして「現場の引き算」が挙げられます。現場に足される業務というのは今後も必ず増えていくので、現場の負担を減らし、本来やるべき業務や、より生産性の高い業務に集中できる環境づくりをしていきたいですね。
リアル店舗の業務改善をする最終的な目的というのは、単に「省人化や自動化をして業務効率化しましょう」という事ではなく、業務効率化によって空いた時間とリソースで接客・サービスの質を向上させ、リアル店舗ならではの付加価値を最大化させることです。そして、顧客満足や生産性の向上に繋げていくことが最終的な目的なのです。従業員の業務負担を減らし、接客の量と質を向上させ、リアル店舗ならではの価値提供ができる。このような環境を作っていくことこそが従業員の働きがいや、幸せにも繋がっていき、ゆくゆくはお客様へと還元されていくと考えています。
耐水紙とは?
今回島忠に導入いただいた耐水紙「パウチフリー」。
耐水性はもちろん、ラミネートフィルムと同等な強度を兼ね備えた汎用性の高い紙です。POPや飲食店のメニューなど、内容が変わる度に大量のラミネート加工が必要になりますが、耐水紙だと一般的なレーザープリンターにセットし、印刷ボタンを押すだけで面倒なラミネート作業が削減できます。
ミシン目加工も可能で、裁断機やハサミを使わず手で簡単、綺麗に紙をカットできます。
商品の詳細はこちらからどうぞ。