AdverTimes Days 2019(秋) 動画活用セミナー

 

2019年9月4日~5日に開催された宣伝会議 AdverTimes Days 2019(秋)(アドタイ・デイズ)で、WILLER株式会社 eコマース Dept. マネージャー福島絵里子氏と、フレイ・スリー前田考歩氏のセミナー『ハウツー動画はコストからインベストへ。「わかりにくいバス停への行き方動画」で、SNSのエンゲージメントを高める方法』が開催されました。

TwitterやInstagramなど企業のSNS利用が一般的になり、テキスト・画像・動画などのコンテンツが日々投稿されています。その目的はブランディング、認知度向上、ユーザーサポート、ファンとの交流など様々ですが、目的に対して効果を出せるコンテンツは、商品の内容や「中の人」のセンスに左右され、再現性の高いノウハウがあるとは言えません。講演ではWILLER社の実事例から、エンゲージメントを高めるハウツー動画制作の考え方や動画コンテンツのクオリティについて、実際に動画を視聴し、ワークシートを使いながら、自社ならではのエンゲージメントを高めるハウツー動画について考えました。

 

セミナーは大きく二部構成。
前半でWILLER社のSNS運用について質問し、回答頂くという流れで行いました。後半では、SNSマーケティングを強化するための手段として、動画活用に至った経緯と制作方法について伺いました。

以下、福島氏の回答の要旨になります。 

  • SNSに取り組み始めた理由は、SNSを利用してユーザーとの接点を増やすこと。
  • Twitter、Facebook、Instagramを運営しているが、現在はTwitterがメインになりつつある。
  • WILLERのバス利用者は20代女性が多く、20代女性のSNS利用率はWILLERが運営するSNSのなかでTwitterが最も高い。
  • Twitterに投稿する内容は、最初はバスの運行情報やセール情報などが中心だった。こうした投稿はフォロワーとのコミュニケーション(例:投稿に対するコメント)を生むことにつながらず、エンゲージメント獲得(例:投稿したコメントのRT、いいねなど)にもつながっていなかった。
  • フォロワーに喜ばれる情報は、ちょっとした困りごとを解決するお役立ち系の投稿。例として、車内で周りの人の視線が気にならなくなる社内設備の紹介や、バンドなどで楽器を持って移動する人向けに、楽器を車内持ち込みができるようになった情報など)
  • 広告を出してフォロワーを獲得するということはなく、上述したコンテンツやTwitter上のトレンドに乗っかる形の投稿や、WILLERのファンの方々の投稿のRT(リツイート)などを行ってきた結果、自然に増えていった。(2019年9月時点で約7.9万フォロワー)
  • Twitterの効果を高めていくうえで、WILLERの利用主要層である20代女性の86%が情報収集にTwitterを利用し、20代の56%が週2-3日、ネット・SNSで動画コンテンツを視聴していることから、動画活用を決定するに至った。

 

次に、こうした経緯・内容でSNSマーケティングに取り組み、さらに効果を出すため実際にどんな動画を制作し、効果を上げているのかについてお話を伺いました。

 

動画は、WILLER社が運営するレストランバスからスタートし、最初に多くのエンゲージメントを獲得したのが、わかりにくいバス停への行き方動画でした。

 

https://twitter.com/WILLER_TRAVEL/status/1108273191993176065

 

この動画は駅からバス停までの行き方を、タイムラプスという早回し効果をかけて制作したものです。この動画を見て、みなさんはどのような感想を持つでしょうか?映像制作になんらか関わったことのある人からすると、照明を使わず、キャストも起用しない、技術面でも演出面でもなんの変哲もない。映像技術や演出の巧みさをクオリティの高さとする価値基準であれば、この動画のクオリティは高いと言うことはできません。しかし、この動画の再生数は1万回を超え、84件のRT、255件の「いいね」を獲得し、企図していたユーザーとのコミュニケーションの活性化とエンゲージメントの向上を実現させています。

 

なぜ、このようなことができたのでしょうか?–

 

この動画といっしょに投稿されたテキストにご注目ください。「わかりにくバス停への行き方」というような情報は、「ユーザーの自社の至らなさによって負(マイナス・ネガティブ)に陥っている状況を解決致しました」といった体(てい)の投稿になると思います。しかし、この投稿のテキストにはそうした“申し訳なさ”は何もなく、「誰もが1度は迷う修羅の道(?)」というような、独特の表現をしているのです。

この文章が練りに練って表現されているものなのか、運営担当者の方の自然な表現なのかについては明かされませんでしたが、この文章は負の状況を解決するために動画を制作しましたといったかしこまった感じがなく、むしろユーザーへ近さを感じさせるものです。

この文章表現と動画がセットになって、多くのユーザーとのコミュニケーション・エンゲージメントを獲得したのではないでしょうか。

実際にこのツイートのコメント欄を見てみると、非常に好意的なコメントが寄せられているのがわかります。

 

こうした文章のトーン&マナーについて、運営担当者の方には、最低限フォロワーが不快になったり、個人の毀誉褒貶につながったりするような投稿は行わないといったルールがある他は、基本的には運営担当者の裁量に任されているということでした。

この運営者の方のキャラクターは、WILLER社のTwitterアカウントの自己紹介欄にも現れています。

このバス停への行き方動画のヒットを受けて、Twitterでフォロワーが必要とする動画について呼びかけたところ、夜の時間帯の行き方動画を知りたいといった反応があり、その声に応える夜のバス停への行き方動画を制作することで、またフォロワーに喜ばれるというコミュニケーションとエンゲージメントの好循環が生まれています。今では数十本のバス停への行き方動画が制作されており、この他にもライブツアーがある会場近くのおすすめ観光スポットや、メイクや着替えができるお役立ちスポットなどの紹介を動画で行っています。

 

さて、ここでこの記事をご覧のみなさんが疑問に思わないでしょうか?こうした動画を何十本も制作するコストはどうなっているのか、と。

 

SNSに投稿するコンテンツは、元ネタとなる情報(例:キャンペーン情報や新商品情報)があれば、コンテンツを考える「企画コスト」は不要ですが、そうしたネタがない場合は、自ら頭をひねってコンテンツを企画開発する必要があります。そして、それをテキスト、画像、動画で表現しようとすると、「制作コスト」がかかります。テキストであれば考えてただ書くだけですが、画像も本職のカメラマン・フォトグラファーに頼めば費用がかかります。そしてこれが動画となるとさらに関わる人・物が増え、開発コストが高くなってしまいます。

例えば、動画にキャストを起用しようとすると、キャストにセリフをしゃべらせるかどうかで費用が変わってきます。起用すれば動画の内容によりますが、それに伴ってスタイリストやヘアメイクをつける必要が出てきます。

さらに、こうしたスタッフを要する撮影が1日で終わらず、2日、3日と続けば、制作コストは雪だるま式に膨れ上がってしまいます。

前田氏によると、企業がSNSで動画を制作し、投稿していくには3つの課題があると言います。

継続性、品質(クオリティ)、開発コストの3つです。品質については先に見た通り、映像技術や演出面でのクオリティが高くなくても、担当者のキャラクターを活かした文章表現を行うことで、クオリティは問題にならないという実例がありました。ただ、クオリティが低ければ劇的に動画制作コストが下がる訳ではありません。コンテンツの開発コストには企画と制作がかかることを上述しました。この二つのコストのうち、まず企画コストを下げることから考えます。WILLER社のバス停への行き方動画のポイントは、「わかりにくいバス停への行き方」という企画を決めてしまえば、後は「次はどの場所にするか?」を考えればいいだけで、新しく企画する必要がないということです。毎回企画をしようろすると、常にネタを考え続けなければいけませんが、動画の企画対象となるものが複数あれば、その数が多ければ多いほど、企画コストがかからなくなっていき、長続きする企画になります。

セミナーでは来場者のみなさんにワークシートを配布し、自社の製品やサービスに対するユーザーの負にどういったものがあるかを考えていただき、さらにそれが1回動画を作成して終わってしまうのではなく、同じ企画で対象がたくさんあるものを選ぶという作業をしていただきました。そうして、対象がたくさんあるものを選んだら、それをを解決するためのハウツー動画、◯◯の仕方動画を企画するという流れで行うと、ユーザーの役に立ち、企画コストを抑えたハウツー動画案が出来上がります。

もう一つの開発コストである「制作コスト」を抑える方法は、一本一本外注していては、コストがかさんでしまうため、ここは内製が必須になります。WILLER社ではeコマース Deptチームの面々が本社と支社のある大阪・東京から撮影を始め、地方出張する際に各地のバス停動画を制作することで、制作コストを抑えていました。

この動画制作をシステム面でサポートするのが、動画制作システム「1Roll(ワンロール)」です。1Rollには予め絵コンテや音楽、映像効果が組み込まれたテンプレートがあり、ユーザーはそれに沿って動画をiPhone、iPadで撮影すると、映像制作経験がない方でも動画を簡単に制作することができます。WILLER社でもこの1Rollを使用して、映像制作経験がなかった方が、どんどんバス停への行き方動画だけでなく、ツアーの観光スポットや、チケットの受け取り方などのお役立ち動画を制作しています。制作した動画はSNSだけでなく、運営するオウンドメディアのコンテンツにも活用しています。

 

1Rollの利用について詳しくお知りになりたい方は、フジテックスまでお問い合わせください。

 

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